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Archive for 7月, 2014

観月祭・月読命について

多久比禮志神社(富山市塩鎮座・林文雄宮司)

昨年、旧暦8月15日中秋の名月にて当神社で、初めて「観月祭」を斎行致しました。

各お社で行われていると思いますが、始めたきっかけは、 「太陽の光を受けて、夜をやさしく照らしてくれるお月様に感謝しよう」というのが発端であります。

もちろんお月様と関係が深い神様は月読命であります。

神話の中でイザナギ命より「天照大御神」「月読命」「須佐之男命」の三貴子がお生まれになり、それぞれ高天原、夜、海原を治めよ、と命じられました。これはみなさんご存知かと思います。

よく聞く名前の神様ではありますが、古事記において月読命はこれ以降現れることはありません。

天照は神明社、須佐之男は八坂神社にお祀りされていることが多く、神社の名前も聞いたことがあると思いますが、月読は月読神社…??

『富山県神社誌』(富山県神社庁編)では、県内2289社(富山303、上新川郡102、中新川郡210、滑川市98、下新川郡117、黒部市62、魚津市97、婦負郡222、高岡市195、新湊市67、射水郡72、氷見市170、砺波市116、東砺波郡201、小矢部市116、西砺波郡105)ありますが、そのうち月読命をお祀りしているのは、富山市月岡新鎮座の「壇山神社」と高岡市太田鎮座の「有磯神社」の2社だけでありました。

我々の生活と月は大変深い関わりがあるのに、三貴子のなかで月読命をお祀りする神社がなぜ少ないのか疑問に感じたこともお祭りを行う一つの理由でもありました。

そもそも、私たちと月にどのような関係があるのでしょうか?

月のはじめを「ついたち」と呼びますが、その語源は「つきたち(月立ち)」の変化と言われています。立つというのは出現、現れると言った意味があり、昔は月の満ち欠けで月日を数えていました。

新月が現れる日がその月の最初になります。そして徐々に月が満ちていき、15日目が満月となり、また欠けていく。新月→上弦の月→満月→下弦の月→新月のサイクル。1ヶ月29.5日周期を繰り返し、月日を刻んでいました。

ですが、これでは29.5×12=354日となり、季節がずれてしまいます。そこで3年に1度、年13ヶ月となる年を設け調整しました。それが閏月です。

昔の行事を今の暦にそのまま直してしまったので季節感がないのはこれが原因となっています。

本来であれば、旧暦にそって物事を進めていけば良いかもしれませんね…

日付だけではなく月の満ち欠けは我々の生活に大変深く関わりあっています。

農業、潮の満ち引きや身体のバランス等々です。

満月の日には出世率が高くなり、出血量も増えるといわれています。血液や体液が月の引力で引っ張られ神経が活性化すると言われています。さらに力が漲り、吸収力が強まるとされています。ですから満月をみて狼に変身するという話もこれらから転じた物だとされています。

人間だけではなく、作物も基本的に満月近くになると栄養を吸い取るので、水や肥料が不足になると言われています。

お祭りは一年に一度ですが、常日頃お月様にも感謝したいと思います。

では当日の祭りの風景をごらん頂いて終わりたいと思います。

観月祭【神事の部】祝詞を奏上する林会員

明かりは幣殿のみ。参列者の方には月の明かりを感じてもらいました。

観月祭【雅楽の部】境内に舞台を作り雅楽演奏

ふるさと、君が代、もののけ姫など

観月祭【雅楽の部】豊栄の舞と地元小学生による浦安の舞を披露

写真は豊栄の舞

(林貞文)

加茂神社の稚児舞(国指定重要無形民俗文化財)

加茂神社(射水市加茂中部鎮座・野上克裕宮司)

今回は、射水市(旧下村)の加茂神社の稚児舞(国指定重要無形民俗文化財)について紹介したいと思います。

毎年9月3日~5日に秋祭りとして斎行されています。秋の実りに感謝する祭りで、五穀豊穣を祈る5月3日~5日の加茂祭(やんさんま祭)と対になる祭りとも言えます。

舞を舞う稚児は、祭りの2週間ほど前に選定式が行われ、氏子の小学生の4・5年生の男子の希望者の中から大稚児2名と小稚児2名が決定します。

選定式から2週間ほどで4名の稚児は賀茂御祖神社(下鴨神社)から伝わったとされる9曲の舞を覚えます。以前は11曲あったそうですが、子供が舞う舞としては難しく、現在では迦陵頻と御幣を持って舞う舞の2曲は舞われなくなりました。

この秋祭りでは古くからの習わしが多く踏襲されていますが、奈良時代から続く化粧方法や、4日の本祭り当日は祭りが終わるまで稚児は一切土を踏まないという故実は特筆すべき点であると言えます。

ではここから9曲の舞について紹介したいと思います。

①「鉾の舞」小稚児2人

この舞は木鉾を持って舞う舞で、悪魔を退治するという意味合いがあります。鉾の振り方は天地人を象ったものだと言われています。9曲中1番長い曲です。

②「林歌」大稚児2人・小稚児2人

舞楽の林歌から作られた舞ですが、曲譜が日本化され、9曲中1番短い曲です。

③「小奈曽利」小稚児2人

舞楽の奈曽利から作られた舞で、可憐な舞の中にも落ち着きがあり、動作は活発かつ柔らかなものとなっています。

④「賀古の舞」大稚児2人

太刀・弓矢を持って力強く舞う舞で、悪霊を退治する舞であると言われています。

⑤「天の舞」大稚児1人

唯一の1人舞で、面を被って舞います。リズミカルで変化に富み、優雅な舞です。

⑥「胡蝶の舞」大稚児2人・小稚児2人

舞楽の胡蝶からできた舞で、9曲中1番有名な舞かもしれません。背中に蝶の羽着け、花園で蝶が舞っているかのような舞です。

⑦「大奈曽利」大稚児2人

小奈曽利に対して大奈曽利と呼ばれています。面・赤熊毛を着けて舞います。活発な動作も面白い舞です。

⑧「蛭子の舞」小稚児2人

えびす神が鯛を釣る動作を模して舞う、神事舞の一種で、「鯛釣り」とも呼ばれています。笛の音により釣りへ勇んで向かう心、ゆっくりと海に近づく動作、釣り上げた喜びが表現されています。

⑨「陪臚」大稚児2人・小稚児2人

舞楽の陪臚から採った曲で、武の舞らしく太刀と楯を持って行う勇壮な舞です。この舞の終わりの際の動作は、戦に勝ち凱旋する姿のようです。

以上が全9曲の説明です。

言葉で表すことはなかなか難しいので、拝観いただけるとご理解いただけるのではないかと思います。

(野上裕樹)

 

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