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会員コラム 「教化活動雑感」

神社の神職としての使命の一つに「教化」活動がある。

神職養成機関でも「教化活動」として一単元があり、毎回、講義の度に全国の神社で実際に行われた教化事例について、その新聞記事のコピーが配布されていた。それは各神社、あるいは各地域の風習・慣習を踏まえた昔からの習俗的なものや、当該神社の宮司や町おこしの企画と相乗りしたものなど様々であった。

しかし、学校での授業とは概してその場限りであり、在学中には試験勉強に備えてファイリングしたものの、現在はそのファイルの在り処さえ、既に忘却の彼方である。

 

さて、いささか長文ではあるが、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』では、次のように書かれる。

「教化」とは、特定の政治・宗教の価値観を、学習する立場の者に、盲目的に内面化させることを指す。左右を問わず、全体主義体制にある国では、教化が行なわれる。

洗脳と紙一重である。

キリスト教やイスラム教などの世界宗教は、その勢力拡大の中で異教徒に対して強制的な改宗を強いることがあった。また、大航海時代、ヨーロッパ列強は、アジアやアフリカ、南北アメリカにおいて、しばしば大量虐殺・強姦や文物の破壊と共に、先住民に対してキリスト教とともにヨーロッパの価値観を教化していった。

戦前・戦中に教育を受けた日本人は、皇国史観を教化されていた。シベリア抑留された日本兵は、スターリンにより共産主義に教化され、赤化日本人を生み出した。朝鮮戦争時、中国軍に捕虜とされた米兵も共産主義に教化され、多くの米兵が共産主義者宣言を出した。北朝鮮による拉致事件の被害者も、北朝鮮に到着後、直ちに主体思想を教化された。

また、生まれた家庭がある宗教の熱心な信者であった場合、親により教化がなされる。その宗教に基づく通過儀礼が行なわれ、その宗教の少年部に加入させられ、成人後に熱心な信者になることが期待される。関連項目・洗脳・同化政策と記されている。

そもそも「教化」とは何かしら上から目線的な感じがして、正直、あまり好きにはなれない言葉ではある。また、このウィキペディアの説明もいささかイデオロギー色が感じられる。

さて、神宮大麻の増頒布について神社本庁でもさまざまな教化資料が本宗奉賛部や教化部広報課、神社新報社などで作成され、広く配布がされている。

ある時、本庁役員会から自席に戻った部長から広報資料の字句の訂正があった。それは、神宮大麻について氏子崇敬者の方々に意義を伝えるべく文中には「啓蒙活動」と記載がされていた点であった。時の岡本総長より「『啓蒙』という意味を辞書で調べ直しなさい。これからは「啓発」とするのが良いのではないか」との下命とのことであった。(あえてここでは「啓蒙」についての説明は記さない。是非、検索を戴き、その意図するところをお考えいただきたい。)

冒頭、「教化」は神職としての「使命」と記した。実際、社家の出身ではない私自身が神職としての喜びを感じるのは氏子崇敬者の思いを伝える仲執り持ちとして祭祇を行うことと共に、鎮守の杜での何気ない「教化活動」により参拝者の笑顔を見る時である。

教化活動の方途は様々である。ポスター、チラシ、CM、冊子・・・・・。しかし、名作家が美辞麗句を並べたて、有名写真家が撮った写真を用い、膨大な費用を掛けて作成された紙の資料も時には大事ではある。しかし、実際に手に取ってもらわないことには意味がない。

私が神職を志して以来、常々、自分が心がける教化活動は、紙資料を単にやみくもに配布するのではなく、何気ない会話や子供の頭を撫でることと思って実践に努めている。

(副会長 嶽 徹)

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